わびさび は【侘び寂び】と書きます。詫びは、物足りない不足の状態「わびしさ」。寂びは、さみしいという感情。
このネガティブなイメージの2つを敢えて肯定し「良い事だよね」と扱う日本独自の価値観です。
和歌・俳句・お茶などジャンルを超えて用いられる、センスの一種ですね。
今や日本文化特有の美意識や感覚として、SUSHIやTEMPURA同様、世界でも伝わる様になってきました。
しかし言葉で言うのは簡単ですが「じゃあ何がわびさびなの?」と言われたら答えられる人は少ないでしょう。
「ニュアンスはわかるけど、使うタイミングが分からない」
「どんなわびさびが良いのか分からない」
「地味とどう違うの?」
そんな疑問に、茶道が好きな私がしっかり理解できる様に解説していきます。

こちらの一見なんでもない茶碗が、この記事を読むとめちゃくちゃ良く感じることになるでしょう。
わびさび は狂気的な発想
『わびさび』を辞書で引くと
日本の美意識の1つ。貧粗・不足のなかに心の充足をみいだそうとする意識。閑寂ななかに、奥深いものや豊かなものがおのずと感じられる美しさをいう。
美学の領域では、狭義に用いられて「美的性格」を規定する概念とみる場合と、広義に用いられて「理想概念」とみる場合とに大別されることもあるが、一般的に、陰性、質素で静かなものを基調とする。
本来は侘(わび)と寂(さび)は別の意味だが、現代ではひとまとめにして語られることが多い。
人の世の儚(はか)なさ、無常であることを美しいと感じる美意識であり、悟りの概念に近い、日本文化の中心思想であると云われている。
weblio辞書 より
なんだか小難しくて分かりづらいですよね。そこで、例えを紹介します。
自分が『お金持ち』だと仮定して見て下さい。お客さんを招く部屋を作る場合、どんな部屋にするでしょう?
例えばシャンデリアや装飾品を飾ったり、鹿の剥製を飾ったり?逆に何も無いシンプルさで高級感を演出したり?
それは選択肢として有りですが、わびさびとは少し違います。
そこで分かりやすく、3パターンの客間をお見せします。
①

②

③

この3つの部屋の中では③パターン目が『わびさび』のある部屋となります。
お金のかかっていない質素な生活や不便な環境だが、どこか懐かしく安心する環境ですよね。これがわびさびの本質なのです。
「いや簡単じゃん」
「誰だって出来るし珍しく無いじゃん」
とお思いでしょうが、自分がお金持ちになったら3番の客間を作りますか?
千利休は江戸時代、大切な将軍を迎えるにあたり、わびさびのある茶室を作りおもてなしをしました。
それがどれだけクレイジーか、常人では考えられない発想か分かるのではないでしょうか?
茶道の世界の わびさび
今では、お抹茶を頂く茶室は静かで簡素なイメージを持つ人が多いでしょう。
ですが江戸時代には茶室をいかに華やかに・素敵に作れるかが大切でした。勿論大切な人を招き入れ、お茶でおもてなしをするからです。
茶道具にもこだわりが随所に見られます。
・床の間の掛け軸や花入は有名で綺麗な物にしたい。
・差し花は季節に合わせた美しい花を探したい。
・茶道の鉄釜・茶杓・茶器などは高価な物を見て欲しい。
などなど、とにかく見栄と自慢の世界でした。
千利休が完成させた わび茶とは?
そんな中、堺の商家に生まれ17歳で茶の湯を習った男がいます。アーティスト・千利休です。
千利休は茶道の師範・武野紹鴎に師事し、織田信長の天領区となる堺で茶の湯の改革に取り組んでいました。
彼の信条は『禅』の思想。不均等や不完全なものを美しいとし、全て満たされる状態を嫌う精神です。
『満月の皓々(こうこう)と輝く月よりも、雲の間に見え隠れする月の方が美しい』と言う。
例えば枯山水もそう。

白い砂を水に、石を山に見立て、全部で15個ある石が、どの角度から見ても14個しか見えない“物足りない”作りになっているのです。
この不完全さが『禅』の精神。
千利休はその禅を茶道に取り入れ、豪華で派手やかな世界とは違った角度の『わび茶』を作ったのです。
その茶室がこちら。


普通、茶室は大広間ですが、この部屋は四畳半の小さな小屋。日の光が差さない暗いジメッとした雰囲気で、柱も不安定なほど細く曲がった木で作られ、乱雑に岩が置かれています。
この部屋に、天下の大名・織田信長や豊臣秀吉を招くのです。
その勇気は一体どこから来るのか?
あり得ない発想力と常人には理解し難い奇人ぶりである。
世界中が注目する東京オリンピックの開会式で欽ちゃんの仮装大賞をする様なものです。
わびさび のある茶碗などの茶道具と言えば…

このような豪華絢爛な輪島塗りの茶入れなんかが上流階級の間では一般的でしたが、千利休はこんなギラギラした物は一切使いません。
千利休が好んで使っていた物と言えば

長次郎作 楽焼茶碗。
まるで子供が作ったかのような凸凹具合と、何も装飾が足されていない寂しい感じが切なさを産み「あ〜…愛らしい…」となるのだ
ちなみにこの楽焼茶碗は、参考価格で2万5千円もします。
この文化は千利休が生み出した、日本特有の変態性が為せる物でしょう。

この様に、割れたり欠けた茶碗をくっつけているのも「侘しい〜。切ない〜。」となり、心を揺さぶらせるのです。
そう考えると現代の『エモい』に通づるものがあるかもしれません。
この精神を受け継いだのが『表千家』『裏千家』『武者小路千家』であり、茶道の世界です。
・不完全 ・不十分 ・欠点 ・弱点 ・幼さ ・凡庸
これら、クオリティに相反する物達が、『わびさび』なのです。
不完全を愛する感覚を大切にしたいですね。
わびさびを感じるものは都内にもあります。
僕が好きな、わびさびのあるサウナはこちら。
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